「パパって娘ちゃんに対して甘いよね~。」
ある日、妻から言われた言葉です。
自分では息子にも娘にも同じように接しているつもりでしたが、どうやら妻から見ると私は娘に対して特別優しい言葉遣いをしているみたいでした。
たしかに娘っていうのはめちゃくちゃ可愛いです。
もちろん、息子も可愛いですよ。
でも女の子って男の子にはない、なんともいえない別種の可愛さがあるように思えるのです。
私みたいに娘に対して甘いパパって世間にはたくさんいるようで、日本はもちろんアメリカでも
「Why do fathers love daughters more than their sons?(なぜ父親というのは息子よりも娘をより可愛がるのか?)」
という議論がたびたびネット掲示板などで盛り上がっています。
私は生物学を研究している研究者なので、父親が女の子どもをよりかわいがるのは生物学的な本能によるものなのではないか?と思っていろいろ文献を調べてみました。
なにかの遺伝子によるものではないか?動物実験によって確かめられたりしているのではないか?と考えたんです。
でもどうやら父親が女の子をより可愛がる傾向があるは生物学的な本能というよりも、私たちが潜在的に持っている性別バイアスによるものらしいんですよね。
要は社会的な要因が大きいみたいなんです。
この理論、娘と息子をもつ父親として興味深かったので、要点をまとてみました。
ちなみにこの記事は、The Gurdianの以下の記事
Fathers pay more attention to toddler daughters than sons, study shows
を参考にして書きました。
Contents
父親の娘と息子に対する接し方の違いを科学的に分析する!
なぜ父親は娘のほうをより可愛がるのか?
というか、そもそも父親というのは本当に娘のほうをより可愛がるのか?
この問題に答えを出すために、アメリカ・エモリー大学の生物人類学者たちがある実験を行いました。
エモリー大の研究者たちまず、研究対象として娘を持つ父親30人と息子を持つ父親22人を集めました。
実験では父親たちに協力してもらい、録音デバイスが埋め込まれたベルトを合計48時間着用し、普段通りに子供たちと過ごしてもらいました。
このベルトはおよそ9分間のインターバルを挟んでランダムに50秒間周辺の音声を記録するようになっています。
研究者たちはこのデバイスを実験後に回収し、父親が娘・息子に対してどうやって接しているのか?何を語っているのか?を詳細に分析しました。
その結果、娘を持つ父親と息子を持つ父親では、子供の接し方に明らかな違いがあったのです!
女の子の父親と男の子の父親では子供と話している時間と遊びの種類が違う!
まず分かったのが、娘を持つ父親は息子を持つ父親より子どもと会話している時間が長いということ。
その差は約60%でした。
また娘を持つ父親のほうが、子供と一緒に歌を歌って過ごす時間が長いこともわかりました。
こちらはなんと5倍です。
一方で男の子をもつ父親は、女の子を持つ父親よりも3倍多くの時間を「激しい遊び」に費やしました。
走り回ったり、ジャンプしたり、転げまわったりといった遊びです。
私の場合は息子も娘もいるので、遊ぶときは全員で同じ遊びをしているなぁ。
話している時間は...。
どうだろう。
息子はほとんどコミュニケーションに問題ないけど、娘はまだ何言ってるかよくわからんし。
この結果は私のように男の子も女の子もいる父親には当てはまらないのかもしれないですね。
女の子の父親と男の子の父親では子供に使う言葉が違う!
次に分かったのは、女の子の父親は「悲しい感情」に関係がある言葉、たとえば“cry(泣く)” “tears(涙)” “lonely(寂しい)”などを使う頻度が男の子の父親よりも高いということです。
一方で男の子の父親は、“proud(誇り)” “win(勝利)” “best(最高)”といった「目標達成」に関連した言葉を多く使う傾向があるという事でした。
これに関連して、女の子の父親は自分の感情についてより多く語る傾向があったそうです。
これってまさに妻が私に指摘したことじゃないでしょうか?
娘に対する言葉遣いと息子に対する言葉遣いが違う!
自分では違うとしたらたぶん子供の年齢が違うからだろ?(息子は3歳半、娘は2歳)
と思ってましたが、もしかするとやっぱり潜在的に娘にやさしい言葉を使っていたのかもしれません。
なぜ父親の態度は娘と息子で違うのか??
結局のところ、この研究から分かったのは父親の子どもへの接し方は男の子と女の子でハッキリと差があるということだけ。
じゃあ何で差があるのか?については、イマイチよくわかっていません。
この研究を実施したエモリー大学の研究者たちは、父親が娘に対してより優しい傾向があるのは、潜在的に性別に対してステレオタイプを持っているからではないか?と推察しています。
多くの父親は女性は優しくあるべきだ!と潜在的に考えているから娘に対して優しい態度で接する。
逆に男性は強くあるべきだ!と潜在的に考えているので、息子に対してはより“力強い”言葉遣いになったりする。
つまり、娘と息子に対する態度の違いの根底にあるのは、性への差別意識によるものではないか?
と言うのです。
うーん、確かに言われてみればそうかもしれない。
女の子には優しく育ってほしい、男の子には強い子になってほしい。
みんなどこかでそう思ってるんじゃないでしょうか。
でもよく考えてみると、それって私たちが勝手に持ってる女性・男性に対するイメージでしかないんですよね。
女性が力強くたっていいし、男性が優しくたって何の問題もないんです。
ところで、私がこの研究結果を見て一番驚いたのが、この実験はアメリカ人の父親を対象にして行われたということ。
客観的に見て、アメリカ社会は日本よりだいぶ男女平等の意識が進んでいます。
ところがそんなアメリカ社会で暮らすアメリカ人の父親ですら、潜在的な性差別意識は持っているようなんです。
やっぱり社会が無意識のうちに培っていた性差に対する「イメージ」って影響力が大きいんですね。
差別意識を植え付けているのは親の責任?
例えば行動だったり、いろんなことに対する能力だったり、おもちゃの好みだったり、子どもにはかなり早い段階から男女で差が見られることが分かっています。
ところがそういった男女間での差よりも、男の子と女の子の共通点のほうが多いのです。
にもかかわらず、父親(おそらく母親も)は男の子と女の子に対して潜在的に態度を変えています。
実は、両親のこういった行動こそが男女のステレオタイプイメージ、性差別を生み出しているのではないか?と指摘する研究者もいるんです。
また、積極的に男女平等の意識を学ばせよう!という態度も、子どもの性差別意識を助長する場合があるといいます。
例えば娘に「女の子だって消防士になれるんだよ!」と言ったとします。
一見すると娘を励ましているようなこのセリフ。
ところが、
「そっか。ふつうは消防士って男の子なんだ...。」
と、逆に男女のステレオタイプイメージを助長する結果になりかねないというのです。
じゃあいったいどうすればいいんだって感じですが…。
子どもは親が考えている以上に大人の会話を理解しているし、大人から言われたことに対して影響を受けやすい。
これを肝に銘じて子育てに励んでいくのがいいのではないでしょうか??